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  • Jin Kimura

金細工またよし

更新日:2020年10月26日


そもそも僕がこの金細工を知ったのは、2年程前。

東京の民藝館のミュージアムショップにある

木製のガラス棚の中にひときわ目を引く銀製の指輪があった。


無駄がなくて洗練されていて、どことなく愛嬌もあるこの美しい「結び指輪」を作っているのが今回ご紹介する又吉 健次郎さんでした。 自分はアクセサリーはつけないけれど、 それでも初めて欲しいと思う指輪だった事を覚えています。 -作られている物を教えてください。 金細工(カンゼーク)と言う琉球王朝時代から伝わる、 指輪やかんざしなどを作っています。 今打っているのは房指輪と言って婚礼指輪として使われていたものです。 先祖代々、又吉家は琉球王朝時代から王府の命を受け 金物細工を作っていたという由緒ある家系でした。 戦争でその歴史は、一旦途切れてしまったものの父である誠睦(セイボク)が 1960年代にほんのわずかな資料からそれらを復活させ、 民藝館で見て頂いた「結び指輪」なども現代に蘇らせたんです。




-お父さんはどのような方だったんですか? 仕事についてかなり熱意のある人間でした。 私が生まれる前の話ですが、工房の前を通りかかった人間国宝の濱田 庄司が 親父が銀を打つ音だけを聞いて「あんた何者ですか??」と声を掛けてきたそうです。 そして、父が金細工の話をするとその仕事っぷりに感銘を受け 「あんたは、琉球王朝時代に戻ってくれ(その時代の仕事を復活させてくれ)」 と言われたと聞きました。 濱田先生は初期の民藝運動でも知られる日本を代表する陶芸家ですから、 親父の仕事に民藝の精神がある事を、銀を打つ音で感じ取ったのかもしれません。


-それでも打つ音だけで、それ程の人を振り向かせる

姿勢は相当なものだったんですね。


そうですね。私はそんな親父の表情がとてもかっこよくて好きなんです。

これは仕事をしている時の写真です。

今でこそ私は当時の親父と同じくらいの歳になりますが、

仕事をしていてもこんな表情にはいまだになれないですね。




-いつ頃から、このお仕事を始められたんですか? 私が40歳になる頃です。前職はラジオのディレクターをしていました。 その頃ちょうど琉球処分により琉球文化そのものが 途絶えようとしていた時でしたが、 金細工は残すべくして残す物であり、無くして良いものではないと感じ 親父の仕事を継ぐこと決めました。

-金細工を作る上でのこだわりはありますか?


仕事を始めてからは、金細工を当時と“同じ行程”で

“同じ道具”を使って“同じ志”で作り続ける事ですね。

それこそが、琉球王朝の時代に返せるものであり、

親父に返せる物だと思っています。 “

金細工を”と言うよりも伝統そのものを

作り続けているような感じかもしれません。



-その決意を持って又吉さんが奮起したからこそ、

今もこうして素敵な物を世に出し続けているわけですね。


私が7代目としてやっている仕事は家系の中で引き継がれた仕事であり、

自分だからできる仕事ではありません。

つまり親父に生涯の仕事の場を与えてもらっている訳であって

それに感謝をしなければならないし、

代々引き継がれてきたとおりの物を作ってこそ、

その役目が果たせると思っています。

なので私が今やっている事は「決して作る物に、自分を(個性を)入れない事」であり

ただそれを続けているだけだと思っています。




-最後に大量生産、大量消費社会の中で、いわゆる職人さんが作るような 機能的で長く使えるものを選ぶ事についてどう思われますか? 私はもう一度、そのような世の中へ帰っていくと思っています。

現代の生活の中で最先端の物が出てくれば来るほど

自然と元の時代に関心がいくのではないかと考えているからです。

機械が作るような現代の物は、誰が作っても同一的な物にできあがりますし、

人間の手が加えられないような部分まで加工ができ素晴らしいですが

それが広がって行けばいくほど、この“物”は何を元にして作られているのだろうと

その起源に自然と関心が深まる、そしてそこにしっかりとした意思があれば

それがその物の良さであり時代や流行を越えて、受け継がれてきた理由だと

気付くのではないかと思うのです。

去年の10月31日、琉球王朝の象徴であった首里城は不慮の火災で ほぼ姿を消してしまいました。 ただそれでも又吉さんは幾度の危機を乗り越えてきたこの「金細工」の技術を 絶やすことは考えず、以前よりも一層製作活動に力を入れていきたいと おっしゃってくださいました。 ここにも一人、当時の伝統を守っている職人さんがおります。 現代の生活において、ハイテクな物は次のハイテクに抜かれてしまうけれど、 こういった人の想いが詰まった意思のある物には多少の流行など気にしない 大らかさと美しさ、頼もしさがあると思います。 一昨年、平成の歌姫 安室 奈美恵さんが引退をされた時にも 沖縄県から国民栄誉賞と共に贈られたのがこの金細工だったそうです。 その時も又吉さんは作った工房と職人の名前は出さずに贈って欲しいと インタービューの冒頭で教えてくれましたが、 これを書き終えたときにその理由もなんだかすごくうなずける気がしました。

そんな素敵な又吉さんと金細工のお話でした。

おわり





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